
1915年7月14日文部省令により東北帝国大学医科大学附属医院が設置され、今年で110年になります。この間、戦争や震災といった災禍を乗り越え、東北大学病院は多くの医療人材を育成し、地域の医療を支え、先進かつ高度な医療を提供してまいりました。これまで東北大学病院を支えていただいた皆さまのご尽力に改めて御礼申し上げます。これからも東北大学病院は地域医療の最後のとりでとしての責務を果たしてまいります。
治療や検査における新たな技術の開発の速度は極めて速く、この10年の変化はその前の20年、30年に匹敵するように思われます。ロボット手術はすでに外科診療に欠かせない治療手段となりました。ヒト全ゲノムが解析されてからわずか25年足らずで、ゲノムのパネル検査が保険適用となり、治療手段としても核酸医薬や遺伝子治療の拡大が見込まれています。
今後はゲノムだけではなく、プロテオーム(たんぱく質)やメタボローム(代謝物)解析が、新たな治療法の開発や臨床検査、予防医療に用いられることになると思います。またAIによる診療補助や医療の効率化も急速に進んでいますし、医療デバイスによる在宅や遠隔での生体情報のモニタリングも確実に導入されていくでしょう。診療情報を含めた包括的で大規模な医療データの解析結果が医療政策や診療の適正化に用いられることになっていくものと思います。
一方で、日本には少子化による人口減少や高齢化という大きな社会課題があります。特にここ東北地方はその社会課題の先進地域です。今後、いわゆる「最新」の医療を創るだけでなく、これらの社会課題解決に資する新たな医療?医療システムを創り出していかなければなりません。そのためには個人?地域をつなぐ医療技術の開発と関連病院のネットワーク、行政との連携が必須です。東北大学病院はその要となって社会課題の解決に尽力していきたいと考えています。
東北大学病院の理念は「先進の医療を優しさとともに」です。この理念の下、東北大学病院はこれからも全ての患者さんに最良の医療を提供し、医育機関として優秀な医療人を輩出し、地域の医療を守ってまいります。そして、ゴールである「最新の医療を創る病院」を目指し、東北大学病院は日々精励してまいります。
ご関係の皆さまにおかれましては、これからもご理解とご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
東北大学病院 病院長
張替 秀郎